2012年8月26日日曜日

ぼん

翌日、遠い町に住んでいる友人が、わざわざ僕の住んでいる町まで来てくれるので、お迎いに行った。そのついでに静岡県の藤枝市に立ち寄った。駅は大きく、周りの建物は大きかったので、都会だ、とびっくりしたのだけれど、蓮花寺池公園あたりまでバスに乗ると、そうでもない。小中学生が入り浸りそうな小さなお好み焼き屋さんがある。マンガなんかにでてきてもおかしくない。こういうのが残っているというのが、偉い。住みやすい。

僕たちは、ある人の墓参りをすることにしたのだった。ちょうど通り道にその人の墓があっただけだ。他意はない。ただ、よく小説などで話題になる墓だったので、愛着はある。西村賢太のように、人の墓を自宅に持って帰る、というレベルではない。ただ、やっぱり、愛着はある。頭を丸めたTシャツのおっさんに墓の場所を聞いて、墓を訪ねた。勝見家之墓、と書いてあったはずだ。真っ黒でつやつやしていた。だけれど、お花がカラカラに乾いていた。お盆なのに、と思い、野花を道で見つけて、献花した。お花屋さんがなかったのである。

藤枝静男の小説には、自分の持つ抑えることの出来ない性欲、そして家族の大半が苦しみ死んでいった結核に対する気持ちがコアにある、と言われることが多いように思う。現実は、彼を観念的な意見から遠ざけた。「私小説」だけが残った。そんな人であるから、野花を根こそぎ持っていってお供えしても、喜んでくれる。墓にバケツの水をかけて、合掌した。野花の根っこは、朝鮮人参のようにたくましかった、ささやかな花、かわいい花。


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